去年書けなかったので2年ぶりにやります。今年の音楽・映画・演劇・本などからのベストカルチャー20。本、特に小説は全然読めなかったのが反省点。本(LOCUST)を作ったのが評価点。
20.Tim Hecker(10月2日 渋谷WWW)
アンビエントノイズ王の雅楽奏者を率いたライブ。ほぼ真っ暗な部屋で行われた、厳粛で快楽な喪の儀式。
椅子があるのマジでありがたかった。ワイワイ動いたり踊ったりしないタイプのライブの時は椅子があった方が確実にいいです。ロックとジャンル付けされてるやつでも、グリズリーベアーとかは座ってみたい。
19.山本直樹/レッド
10年以上続いた連載が完結。6〜7月頃に一気に読みました。連合赤軍に参加した若者のあさま山荘事件に至る経緯を描いた漫画ですが、山岳ベース事件のところはとにかくしんどくてしんどくて。書く方はもっとしんどかったんじゃないだろうか。
18.Low/Double Negative
キャリア20年以上のベテランバンドの新しさ。Red House Paintersと並ぶフォーキースローコアバンドの雄として有名ですが、今作は完璧にインダストリアルなノイズから始まって驚くし、アンビエントR&B感がボーカルやギターの音から漂っているところにもビビる。ひたすらに内省的な夜のアルバムとして。
17.花咲くころ
ジョージア映画。もともと2013年公開だけど、日本公開は今年。少女二人の世界が雨上がりの光のように描かれているわけだが、二人がパンの列に割り込んだり家族に対してアホっぽくキレたりしてて、割と下劣な部分も見えてくるところがいい。民族舞踊を踊るシーンで足を一切映さないところに感動した。
16.千葉雅也/意味がない無意味
全ての謎が引き寄せられていく穴、意味から逃れられない場所としての「意味がある無意味」と対比して、終わらない思考を停止させて行為に向かうことを可能にする「意味がない無意味」(=身体=物質=儀式)を称揚する論集。思弁的実在論をはじめ、2000年以降のフランス現代思想の紹介としても素晴らしい仕事。
15.ワワフラミンゴ/ハートのふゆ合戦
「意味がない無意味」日本演劇代表。大好き。
14.ライオンは今夜死ぬ
諏訪敦彦監督のジャン=ピエール・レオを主演に迎えた最新作。異様な光の強さや子供と老人と死者というカップリングのわかりやすさは好き嫌いが分かれるところだけど、人が死ぬことを無理なくポジティブに捉えた映画として僕は心を動かされた。
13.ハイバイ/ヒッキー・ソトニデテミターノ
劇団ハイバイの代表作の再演。引きこもりの問題を両義的に引き裂いたまま舞台の時間を最後まで作っていて、本当に強い作品だと思いました。古舘寛治の好演が忘れがたい。ハイバイだと、8月に観た「て」の再演も素晴らしかった。
12.15時17分、パリ行き
クリント・イーストウッド最新作。こんな変な映画なかなかない。なんだあの観光シーンは。自分がまだまだ映画のことちっともわかってないって思いました。
11.Rafiq Bahtia/Breaking English
インダストリアルノイズと現代ジャズの交点ってなかなかないし、それをめっちゃ巧みにやってのけていて超新鮮でした。
10.心と体と
イルディコー・エニェディ監督によるハンガリー映画。映画だけだとこれがベスト。村上春樹の恋愛小説みたいな話で、可愛くなかった女の子が最終的にすんごく可愛く感じられる。キャメラの位置がめっちゃ冴えている。
9.阿部共実/月曜日の友達
マンガはほとんど読んでないけど、今年一番泣かされたのはこれ。ボロボロ泣いた。
8.SCOOL一周年イベント(初日、山縣太一・ワワフラミンゴ・ZVIZMO×テンテンコ・山崎広太)
ダンス、演劇、ノイズミュージックのバランス良い配置と各パフォーマーが実力を遺憾なく発揮したことで名イベントに。
7.Kendric Lamar(7月27日 フジロックフェスティバル)
圧巻。超主役。いままで見たフジのグリーントリでベスト。カンフーパロディの下品な映像も良かった。
6.Roth Bart Baron/Hex & 12月9日 渋谷WWW
今年はクラウドファンディングにも参加したし、ロットにはとてもお世話になった。アルバムのアグレッシブさとライブの繊細さでダブルポイント。「君さえいなければ、こんな気持ちにはならずに済んだ」。
5.R +R=NOW(9月1日 東京JAZZ FESTIVAL)
グラスパーやチャンスコなど、ジャズ最前線メンバーのオールスターバンドの来日公演。反復しているようで少しずつ変化していく音が超気持ちよかった。歴史的名演だと思うので音源化してほしい。それをずっと聴いていたい。
4.KERA MAP/修道女たち
ガルシア=マルケスとチェーホフの良いところをブレンドさせたような超強力な物語で三時間の長丁場が全く飽きなかった。迫害された修道女たちの苦闘が実に切実
に笑える。最終的な悲劇の感覚も新鮮。プロジェクション・マッピングなどの映像演出も全て効果的に作品とつながっていて、本当に人間が面白いと感じるものを作ろうとする気概に胸を打たれました。
3.庭劇団ペニノ/蛸入道 忘却ノ儀
単なるスタジオが蛸の神様を祀る寺社に!お経が読まれ、火は焚かれ、会場は異様な熱気に包まれる。ペニノの舞台装置には毎回驚かされるけど、今回は特に驚いた。宗教の危うさと魅力を危ういまま直接的に伝える。今年一番の異物的体験。
2.Jim O'rouke/Sleep Like It's Winter
45分一曲、ジム・オルークまさかのアンビエント。ニューエイジ的アンビエントの壮大なトビとは無縁の、単純な音の響きの鋭さだけでトバされる体験。ずっと穏やかだと思ったら大間違い。聴いていると頭がおかしくなるんじゃないかという瞬間がなんども訪れる。危険な音楽。
1.NEW TOWN(1日目)
これはフェス全部の総合点なのである意味反則なんですけど、最高だったのでしょうがない。CINRA主催の学校の敷地を利用したほぼフリーのフェス。音楽、美術、映画、演劇、、ゲーム、食、盆踊りetcがシームレスに混じり合うんだけど、ニュータウンや団地というテーマで全体が緩くつながっていて、ある種の喪失感を受け入れるための準備の空間になっていたと思う。喪失を別の何かに変換する、といったほうが適切か。だからか、なんだか勇気を受け取った試みだった。
私が観たのはROTH BART BARON、折坂悠太、Homecomingsのライブ、田中宗一郎×宇野維正×柴那典のトーク、中島晴矢主催の美術展「Survibia!」、劇団子供鋸人「New Town」あたり。そのどれもが素晴らしく、そして会場に合っていた。「みんなで作る、新しい文化祭」というフレーズに若干の不安を感じていたが、運営は非常にプロフェッショナルだったと思う。何より、ライブ会場が体育館なのに音がめっちゃ良くて低音がしっかり鳴っている事に感動した。今年一番ポジティブな試みだったと思う。とにかく、CINRAの底力に心底感服した。
今年は全体的にダークなものに惹かれる一年だったなと、ここに並んだラインナップを見ると思います。そういう時代なのかもしれない。
以下、各ジャンルごとのベストです。
アルバムベスト10
1.Jim O'rouke/Sleep Like It's Winter
2.Rafiq Bahtia/Breaking English
3.Roth Bart Baron/Hex
4.Low/Double Negative
5.Julia Holter/Aviary
6.Nels Cline 4/Currents,Constellations
7.Homecomings/Whale Living
8.Siavash Amini/Foras
9.Iceage/ Beyondless
10.中村佳穂/AINOU
(時点に、冬にわかれて、Tim Hecker,Nate Smith など)
映画ベスト10
1.心と体と
2.15時17分、パリ行き
4.花咲くころ
5.寝ても覚めても
7.アイ、トーニャ
8.万引き家族
9.レディバード
10.大人のグリム童話
(次点にラブレス、夜の浜辺で一人、ゴーストストーリーなど)
演劇ベスト10
1.庭劇団ペニノ/蛸入道 忘却ノ儀
2.KERA MAP/修道女たち
3.SCOOL一周年イベント初日(山縣太一・ワワフラミンゴ・ZVIZMO×テンテンコ・)
4.ハイバイ/ヒッキー・ソトニデテミターノ
5.ワワフラミンゴ/ハートのふゆ合戦
6.岩松了、作・演出/市ヶ谷の坂(伝説の虹の三兄弟)
7.ジエン社/物の所有を学ぶ庭
8.新聞家/無床
9.ヌトミック/ヌトミックのコンサート
10.ロロ/グッドモーニング
(次点にコトリ会議「しずかミラクル」、ゲッコーパレード「ガラスの動物園」、スペースノットブランク「ネイティブ」など)
ライブベスト10
1.R +R NOW(9月1日 東京JAZZ FESTIVAL)
2.Kendric Lamar(7月27日 フジロックフェスティバル)
3.Roth Bart Baron(12月9日 渋谷WWW)
4.Tim Hecker(10月2日 渋谷WWW)
5.Beach Fossils(3月29日 渋谷クラブクアトロ)
(次点にMasion Book Girl,Eastern Youth,Iceage,蓮沼執太フィルなど)