I was only joking

音楽・文学・映画・演劇など。アボカドベイビー。

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(2:00~3:00)

前回はこちら
iwasonlyjoking.hatenablog.com

 

さて、2分が過ぎた。

どうやら、この曲の特徴を成している音は、音量と一緒に倍音も増加していく高音のフィードバックノイズ(ノイズというには音が整理されている、専門的な言葉を使うと日整数次倍音が少ない気がするが、耳にキンと響く感覚はノイズと呼ぶにふさわしいと思われる)であることがわかった。もちろんまだ2分が過ぎたところなので確かなことは言えない。私は最後まで何度も聞いているので大体の展開は覚えているが、知らないふりをして少しずつ進んでいく。

次の1分間の印象は大体こんなだ。

フィードバイクの波が落ち着き、凪の時間がやってきた。鍵盤の単音がそれまでより大きく感じられる。だが、凪はすぐに終わる。鍵盤の音がいくつか弾かれるのに合わせて、波も再び少しづつ押し寄せる。そして、後半に入ると、またもや音の壁に包み込まれる。冷たいが柔らかい。不思議な感触の壁だ。この空間にずっと入っているのも幸せかもしれない。そんな思いにかられる音だ。

 

時系列で書くとこのようになる。

2:00~ 森の中を風が抜けるようなさわさわした音とフランジャーのかかったようなぐわんぐわんした音が混ざって控えめに鳴っている。こういうアンビエントっぽい音はどのように鳴らしているんだろう。アンビエントの作り手としては僕は完全に無知なので、専門の人に聞いてみたい気がする。その前に自分で調べた方がいいだろうけど。

2:09 小さめの鍵盤でdの音が響く。

2:15 もう少し大きいgの鍵盤の音。倍音が強い。この辺りからフィードバックが再度現れる。音量はそこまで大きくないが、音階の異なるフィードバック音が五重、六重に重なって聞こえてくる。

2:28 自然音もざわざわした音がわずかに聞こえる。今までの音とは少し毛色が異なるので気になる。

2:32 cの鍵盤がなると同時に、一気に沸騰。

2:35~2:44 鍵盤が間を置いてf~e~aと続く。その間、aが基音と思われる沸騰フィードバックが音の壁を形成している。

2:51 ベンディングされた、音階が不定形に曲げられた「ふよ〜〜ん」という音が右チャンネルから左チャンネルへ流れてく。少し可笑しい。

2:56 フィードバックが続く中、cの鍵盤。

 

ここまでで気づくのは、鍵盤がほとんど全て白鍵の音であるということだ。黒鍵を駆使して半音で音が動くようなところがない。和音の要素を紐解いていくと、かなり単純なものになるはずだ。倍音の変化で印象を少しずつ変えていく曲だから、複雑な和音は邪魔になってしまうのだろうと想像できる。単純な和音構造は、アンビエントの基本的な規則であるだろう。ジム・オルークはインタビューで「私にとってアンビエントは何か?と自分に問いかけた」と語っているが、その一つが和音への意識として現れているのだろうか。(続く)

 

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