I was only joking

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東京塩麹 象の鼻ワンマンショーwithAokid

東京塩麹のワンマンライブを横浜の象の鼻テラスまで観に行った。

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ガラス張りで海沿いの道がよく見えるテラスの中、照明が落とされ、8人のメンバーがキメの細かい演奏を始める。

東京塩麹スティーブ・ライヒの音楽を直接の参照元にしていることは以前から知っていたし、今までは常にライヒを意識しながらその音楽を聞いていたけど、今日聴くとそこまでライヒじゃない。反復が少しずつズレるというよりも、ユニゾンパートを交換していくアンサンブルが多用されていて(ギターとトランペットが同じフレーズを弾いた後でベースとキーボードがまた違うフレーズをユニゾンする、みたいな演奏パターンが多い)、プログレやポストロックを思い起こすものがあった。具体的にはクリムゾンとかドンキャバレロあたり。

それと同時に、トランペットとトロンボーンの女性ホーン隊と、ジャンベの立体感のある演奏が前面に出ていたせいか、アフロビートを想起させる演奏でもあった。

演奏能力は高いバンドであるし、難しいアンサンブルも難なくこなしていたが、どこかコンパクトにまとまっている印象も否めなかった。今ポストロックとアフロビートを混ざった精密な音楽を演奏する必然がどこにあるか、いまいち僕にはわからないからだ。時流に乗るとかそういう話ではなく、既存の音楽に収まらない何か、野心や色気と言った言葉で表せられるものが聞き取れなかったし、見当たらなかった。

野心を感じたのはAokidとのコラボレーションで、細かい指示がされている演奏とは対照的なラフなアドリブのダンスによって、その場に立体的なコントラストが生まれていた。演奏の途中、会場の外側でダンスをしているAokidが見え、逆立ちやダッシュを交えた激しいブレイクダンスを遠くから繰り広げる。その距離感から始まり、会場に入ってからは、客席の間をぬって体を素早く動かし、腕を伸ばして観客をダンスに誘い込む。彼は躍動を司る妖精だった。

その躍動に突き動かされるように、アンコール一曲目(リーダー額田くんが20歳の時に作った曲とのこと)では演奏にもダイナミズムがあって、今日一番のハイライトとなった。会場の外との関係も少しずつ有機的なものになっていき、外を歩く人々がこちらを観て楽しそうに笑う姿も、「演奏」の一部になっていた。そう思った瞬間が、今日一番楽しかったかもしれない。

Aokidと東京塩麹の間のコントラストが、東京塩麹のメンバーの間にも生じれば、強烈なグルーヴが立ち現れるのではないか。そんなことを考えてしまう。器用な穏当さよりも、ぶつかり合う律動の荒れ模様を。8人のメンバーのシャツ及びブラウスの色が全員異なっていた(白、黒、茶、青、黄、ピンク、赤、緑)のはおそらく偶然ではないだろう。色彩のコントラストに、音のコントラストを累乗させることができれば、より強い魔力を宿した妖精がその場に召喚され、我々を強烈な陶酔の中に導くのではないだろうか。

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