I was only joking

音楽・文学・映画・演劇など。アボカドベイビー。

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(31:00~32:00)

前回はこちら

iwasonlyjoking.hatenablog.com

 

音がふっと消えたり、また現れて膨張したりする。しばらく音が途切れない時間が続いていて、少しずつ静寂の量が増してきたから、ここからまた静かになるのかな?という予感がする。

 

31:02 a#で持続していたシンセの音が一瞬おさまる

31:03 左からf、右からd#の音のシンセが現れる。ただ、いくつもの音が重なっていて、少しトーンクラスターのようにも聞こえる。

31:06 左チャンネルから高いg中心の鍵盤音が乗っかる

31:10 他の音が引いて、gの音が残る

31:14 左側から低いd#の音。ブリブリしていて、スピーカーが振動している。ギシギシとノイズが出ている。右からはオクターブ上のd#の鍵盤。

31:18 a#中心のコズミックな持続音が強い存在感で広がりだす。右からdの音。2秒ほど後にd#の音も響いていて、d、d#、a#の少し緊張感がある和音として聞こえる。この辺り、どうやらルート音はd#っぽい(いつのまにルートが変わったのか?)

31:23 中音域の、ギターフィードバックらしいdの音が右から聞こえる。

31:25 靄のようなfの音と、アタックの強いa#のシンセが同時に聞こえて、全体の空間を覆うイメージ。

31:29 多数の音のグラデーションの中に、風のような「ゴォー」という音が混じる。

31:31 控えめだが存在感はあるa#のキーボードの音。Taylor Deupreeの曲で使われてそう。アタックの強いa#が音をどんどん伸ばしていく。

31:35 dの音が加わる。

31:38 a#の音が収まり、右寄りに鳴るcのグニョグニョしているシンセ音に取って代わる。cはa#より下の音程。Taylor Deupree風鍵盤が低いdで一瞬鳴る。

31:39 左寄りに中音域のdの音が持続。7度の音だから、少し不穏な印象。

31:43 音像が曖昧な低音が押し寄せてくる感じ。

31:46 一度おさまったa#の音が再び現れて場を覆う。

31:50 低音が全体的に弱まる。

31:54 細く柔らかい鍵盤のfの音。a#の音もほぼ同時にfに変化している?(ちょっと不明瞭)

31:55 この辺り、低音でd#の音が持続的に鳴っている。

31:58 フィードバック風のgの音が聞こえる。

 

毎回秒ごとに記述して思うのは、変化の多さである。上で記述していること以上の変化が実際には起きていて、音像が曖昧であるため、言語記号に置き換えるのが難しい。聴くたびに違うポイントに気付いたりする。この変化の多さは、自然の動きの変化をトレースしているようにも聞こえるが、極めて人工的でもある。草花や虫鳥や海や大地や空気の微細な変化を人間が作り上げた音楽装置の中にトレースして、コントロールしながら「音楽」化する。フィールドレコーディングなき自然の模倣。この音がどこまで厳密なのか、どこからが偶然性に左右されているのか。どうにもジョン・ケージ的な問いが、頭に浮かんでくる。ジム・オルークが作る録音芸術が、地球上に溢れる「音」と、人間が時間をかけて紡いできた規則的な「音楽」の間に、新しいゾーンを作り上げている音楽であるというのは間違いない。そのゾーンをより細密に観測したくて、僕は聴取と記述の往復を続けているのかもしれない(続く)

 

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