I was only joking

音楽・文学・映画・演劇など。アボカドベイビー。

Once Upon A Time In Hollywoodの短評(というかメモ)

 1975年に犬面のカナダ人が発表したレコード『Tonight's the night』はドラッグ禍で命を落とした二人の友人に捧げられており、酩酊しきった状態で録音されたボロボロの演奏が死の匂いを醸し出す異形の名盤として知られている。1969年8月9日の夜、ブラッド・ピット演じるクリフ・ブースが愛犬に「(LSD漬けタバコを吸うのは今夜だという意味で)Tonight's the night」と言い放つのがNeil Youngへのオマージュだとしたら…。ただの慣用句の可能性も十分あるが、失われたものへのレクイエムという意味合いにおいて『Tonight's the night』と本作は間違いなく通じており、全体に漂うやけっぱちな感じも近い。映像のタイトさで魅せられちゃう(横から縦に移動する長回しとか素晴らしい)から気にならないけどタランティーノにしてはだいぶゆるい脚本だし、ディカプリオのセルフ怒り心頭シーンにもブラピのオンボロ車暴走にも戯画化されすぎなブルース・リーにもヤケクソなルーズさを感じる。そのルーズさが、おきまりの暴力描写を鮮やかななにかに変えている。キッチリしすぎな人が見せたゆるさが、この映画の味わい深さではないか。そんなことを、Neil Youngの8枚目のアルバムを聴きながら思った。

 

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