I was only joking

音楽・文学・映画・演劇など。アボカドベイビー。

2017-01-01から1年間の記事一覧

新芸術校グループ展B『健康な街』に見る理想主義の先

健康な街、というステートメントからは、ある種の皮肉を連想していた。「健康」へのオブセッションを押し付ける「街」の様相をトレースしていくような。実際に作品群を前にすると、そこにあるのはよりストレートな反抗心だ。「健康」と名指された状態が実際…

東京デスロック『再生』の非-情緒性、非-ポップス性について

僕と同じく批評再生塾に参加している渋革まろん氏が、先日上演された東京デスロック『再生』について書いてるのに触発されて僕も書いてみることにしました。 marron-shibukawa.hatenablog.com とても面白く読んだのですが、なかなか首肯できない部分もあって…

新芸術校グループ展「其コは此コ」

ゲンロン新芸術校グループ展「其コは此コ」に伺いました。 shingei-group-a 新芸術校の4つのグループ展のうち、今回は最初のAチーム、四名よる展示。作家それぞれにやりたいことがはっきりしていたため、展示自体の明確な方向性は定めなかったとのことだが…

ゆうめい/弟兄

(9月9日 STスポットにて) ゆうめいは私演劇の「私」の扱いが本当に巧い。作・演出の池田亮の実体験を演劇にしている作風はハイバイの岩井秀人から受け継いでいるのだと思うが、ゆうめいの演劇はハイバイとは異なる新しい魅力を獲得をしている様に思える…

The National/Sleep Well Beastに関するメモ

9月8日(金)に発売となったThe Nationalの7枚目のアルバム『Sleep Well Beast』を家や外で4、5回リピートしたのでとりあえずの印象を。 今回は4曲リードトラックが発表されてて、どれも抜群の出来だったので期待していました。Casey Ressによるデジタ…

ナカゴー『地元のノリ』

(9月1日 アートシアターかもめ座にて観劇) 冒頭アナウンス(「携帯の電源をお切りください」のやつ)において、出てきた青年がこう告げる。「これから出てくる人たちは僕以外全員人間ではありません。僕も途中から人間ではなくなります」。直後、河童(の…

あなたは今、この音を聴いている?

ナカコーこと中村浩二氏のツイート。 アンビエントミュージックを体感するというのは、夕日が沈むのと同じだと思ってほしいんだ。私たちの演奏を主にしなくていい。目を離した瞬間、日が沈むような。ごく自然な時間の経過を感じて再発見することです — Koji …

『部屋に流れる時間の旅』について

君の幽霊になんかなりたくなかった 誰の幽霊にもなりたくなかった 僕には誰もいらない The National『Everyone's Ghost』 チェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』は能・狂言の翻訳などを通じて日本古典芸能に触れていた岡田利規の近年の活動が比較的ダイ…

小松台東『山笑う』と「外のない人々」について

小説家の保坂和志はインタビューでこのようなことを語っている。 ぼくにとってまず世界とか人生とかを外側から見る視点をいかに自分のなかから完全になくしていくかということだから。世界というのは外から見えない、自分の人生とかも外から見えないわけでね…

ジャック・リヴェット、13時間の傑作『アウト・ワン』を観た

5月6日と7日にクラウドファンディング出資者限定で、昨年亡くなったジャック・リヴェット監督の12時間43分に及ぶ1971年の大作『アウト・ワン』の上映が都内某所で行われた。 indietokyo.com 『アウト・ワン』は8つのエピソードに分かれたパリの…

映画『夜は短し歩けよ乙女』は『ラ・ラ・ランド』の完璧な陰画である

森見登美彦原作、湯浅政明監督のアニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』を観ました。同じスタッフ陣によるアニメ『四畳半神話体系』は観ていない(正確には3話まで観てそこから先を観ていない)ので今回がはじめての湯浅作品。原作は読んでいるはずだがぼ…

デュレンマット『ギリシア人男性、ギリシア人女性を求む』は今真っ先に読むべき海外文学です

はじめての海外文学、何を読めばいいのかーーこんな風に問われたら今なら僕はこの一冊を勧める。 U209 ギリシア人男性、ギリシア人女性を求む - 白水社 フリードリッヒ・デュレンマット(1921〜1990)はスイス生まれのドイツ語劇作家・小説家であり…

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』についての試論(十字、点滅、エルヴィス、歴史)

今年最大の映画ニュースのひとつがエドワード・ヤン監督『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の25年ぶり日本劇場公開だろう。台湾映画を代表する1本であり、世界的に評価が非常に高いにも関わらず、日本ではDVD化されず長年観ることが叶わなかった作品だ…

Bob DylanとCloud Nothingsについて

2月から3月にかけてほとんど新譜を聴いていなかった。何を聴いていたかというとボブ・ディランを、萩原健太『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』を読みながらディランをひたすら聴いていた。 honto.jp この本、デビューから2012年のテンペストに至…

『わたしは、ダニエル・ブレイク』は今年のベスト映画候補です

danielblake.jp 社会問題をテーマに取り込む作品は数多くあれど、ここまで真正面から政治的課題と向き合った映画も珍しいのではないか。ケン・ローチ監督『わたしは、ダニエル・ブレイク』は英国保守党の福祉、医療、教育分野への財政削減政策にストップをか…

『騎士団長殺し』は物語についての物語である

村上春樹はほんとに批評しづらい作家だ。ひとつの視点を持ち出して語るにしても、説得力が発生せずに空振りしているような感覚があり、「深読み」の魔の手に囚われるように感じてしまうのだ。自分は穿ったつまらない見方をしているのではないかという思考が…

ロロ『いつ高シリーズ』まとめ公演はコミュニケーションの在り方を刷新するような大傑作だった

作・演出の三浦直之率いる劇団ロロが不定期に公演している「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校」、通称「いつ高」シリーズ。現在その第四弾『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』が駒場アゴラ劇場で上演されているが、それ…

早稲田松竹「はじめての映画たち~映画作家の初期作品集~」で学生たちの映画を観ました

昨日早稲田松竹で、早稲田大学【映像制作実習】で制作された2作品と黒澤清『ドレミファ娘の血は騒ぐ』を観ました。 今週の早稲田松竹は「はじめての映画たち」ということで是枝裕和や塚本晋也など日本映画のトップランナーの処女作を上映しているんですが、…

2016年ベストカルチャー20とサイレント・マイノリティ宣言

ブログのフォーマットをはてなブログに変えてみました。しゅんです。 2014年からはじめて三年目になる個人的ベストカルチャー。遅くなってしまったけど2016年をまとめてみます。まずは長ったらしい前置きを。 2016年のいくつかのトピック、ピッ…