I was only joking

音楽・文学・映画・演劇など。アボカドベイビー。

2019-01-01から1年間の記事一覧

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(44:00~44:21)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com おい!最後の20秒ふわーっとはじまってさらっとフェイドアウトするだけじゃねーか!書くことなんかないわ! と思いきや、おわり間際に低音が押し出されて一瞬音が迫ってくるのが気になる。残り10秒でフェイドア…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(43:00~44:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 音が伸びやかなのに枯れた印象を覚えるのは、この曲がもうすぐ終わることを知っているからだろうか。ただの澄み切った空気のような、なんの不足もない世界。不足のない世界はすぐに終わる。 43:00 低音のgが響き…

LOCUST vol.3 巻頭言「ようこそ、「知らない地元」へ」

僕が編集長を務める批評/旅行誌『LOCUST』の第3号「岐阜県美濃特集」が11月24日(今日じゃん)の文学フリマから頒布開始します。 bunfree.net めちゃクールで最高の本が出来たという自負があるので是非ともお買い上げいただきたいところですが、「なんで岐阜…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(42:00~43:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 死の匂いが増している。そんな気がする。羽虫の最期のような終わり。人間的味付けのない、世界にありふれた生命の停止。小さい音の、長いスパンでの反復によって時間は過ぎ去り、まもなく訪れる無音に向けて待つ…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(41:00~42:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 冷たく薄い音の空気が、あたりを囲んでいる。少しずつ色彩を変えていく低音の響きは穏やかだが、中音〜高音部を漂う冷気は一定の険しさと尊厳を保っている。この曲の題名は「冬のように眠る」。たしかに、そろそ…

ジャパノイズとノベルゲー ーホー・ツーニェン『旅館アポリア』における「日本戦後文化」ー

あいちトリエンナーレは色々な意味で話題になったけれども、展示作品で最も評判を呼んだものの一つが、シンガポールの作家、ホー・ツーニェンによるインスタレーション作品『旅館アポリア』であることは間違いないだろう。 『旅館アポリア』は、沖縄へ突撃す…

クロード・シャブロル『野獣死すべし』短評

クロード・シャブロル『野獣死すべし』(1969年・フランス) (9月13日、新文芸坐シネマテークにて) 絶妙。黄色い蘭を挟んだ男女の気まずさの横で淡々と整えられていく鴨肉。「シチューと肉は別で用意しとけ!」と激昂した野獣男の言葉に呼応するように、丁…

Once Upon A Time In Hollywoodの短評(というかメモ)

1975年に犬面のカナダ人が発表したレコード『Tonight's the night』はドラッグ禍で命を落とした二人の友人に捧げられており、酩酊しきった状態で録音されたボロボロの演奏が死の匂いを醸し出す異形の名盤として知られている。1969年8月9日の夜、ブラッド・ピ…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(40:00~41:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 40:00 持続するfの音。 40:03 頻出するa#のシンセ。少し音色が変化している?輪郭がぼんやりしているような・・・ 40:07 右チャンネルから押し寄せる波のようなfの音。控えめな波。 40:11 全体にふわっと広がる…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(39:00~40:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com より静かに、静かにと、静寂に向かっていく感じがある。いよいよ終わりが近づいているからか。 39:00 持続するfのシンセ、左からは輪郭の曖昧な高いaの音がしばらく伸びる 39:09 a#を基音とした音が揺れながら迫…

「男らしさ」に縛られないための男の子のバンド5選

英文学研究者でフェミニズム視点からの批評を多く書いている北村紗衣さんの「男らしさ」に関する記事を読んだ。 gendai.ismedia.jp この記事の白眉はレッド・ツェッペリンの話から始まるところで、「男らしさ」への懐疑を歌っているバンドが一番「男らしさ」…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(38:00~39:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 穏やかな時間は続く。メロディがないわけではないが、森の中で木々が風に揺れているのを聞いているような感覚を覚える。 38:01 倍音の少ないサイン波を思わせる音が伸びていく 38:06 右側から低音の音の膜が押し…

映画『新聞記者』には骨がない

『新聞記者』という映画がストレートな現政権批判を行なっていてなかなか面白いという噂だったので、映画館で観てみました。 shimbunkisha.jp 結論を言うと、全く面白くなくて、非常に辛かった。 理由は主に三点にまとめられます。(ネタバレしてます) ・と…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(37:00~38:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 37:00 a#の鍵盤が薄く引き延ばされる 37:03 低音のg。短調の印象。 37:05 風の音のような「コォーコォー」という音が規則的に聞こえる。 37:10 右チャンネルだけ音が途切れて微かにcの音が響く 37:12 ザラザラと…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(36:00~37:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 昏い場所へ沈みこむような印象を覚える。音数が減り、穏やかな終わりへと向かう予感が漂い、熱くも冷たくもない延長に身が馴染んでいく。 36:02 寺社仏閣の鐘の音を思わせる低いdの響きが右と左でそれぞれ一回ず…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(35:00~36:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 沈黙、というほど音が消えたわけではないのだが、音が「何も語らない」感覚がこの時間の中にある。感情への耽溺、宗教儀式的な荘厳さ、あるいは機械的な無情の強度。エモでもニューエイジでもインダストリアルで…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(34:00~35:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com いつの間にか、繭の中にいた。少し音量が落ち着いて、アタックの強い電子音は後退し、膜のような淡い音が漏れ聞こえる。それは繭の中として思えない白さと柔らかさだ。糸が重なったかのような肌触りは優しく、こ…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(33:00~34:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 音の圧力が上がる。どこかマイナー調で、不穏な空気も感じられる音の流れ。超自然物を表現しているような雰囲気もあり、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『メッセージ』(2017年)に出てくる、宇宙から来た半月型の巨…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(32:00~33:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 空の上、無重力空間でゆらゆら揺れていたところから、大地に戻る。乾いた渓谷を、高く広い視野から高速移動しながら眺める。そんなイメージが浮かぶ。どことなく音のスケールが大きい。暖かで穏やかだが、押し寄…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(31:00~32:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 音がふっと消えたり、また現れて膨張したりする。しばらく音が途切れない時間が続いていて、少しずつ静寂の量が増してきたから、ここからまた静かになるのかな?という予感がする。 31:02 a#で持続していたシン…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(30:00~31:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 音がどんどん塗られていくイメージ。ギラギラした電子音、可愛らしさのある笛のようなシンセ、輪郭の薄いぼんやりした音圧など、いくつかの音が入れかわり立ちかわりに現れて、分厚く冷たい音の壁となる。後半は…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(29:00~30:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 穏やかさや暖かさの印象を与えていたここ数分の時間から、少し不安感や冷たさを感じる時間へ移行したように感じられる。SF的なボワボワ鳴るシンセと天使的なかすかに持続する単音がぶつかる。それは決して気持ち…

最近のこと(地点とDOMMUNEの感想)

5/28 仕事終わり、地点『シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!』を観に行く。 チェーホフの短編小説や書簡の断片で構成された上演。安部聡子さんの靴についた鈴が「シャリン、シャリン」とリズムを刻み続けるからか、音楽として体を揺らして体験していた。…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(28:00~29:00)'

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 予兆のような一分間。この世のものと思えないような何者かの声が囁く(その声の主を「天使」とでも形容したくなるけど、流石に陳腐にしか感じれらない)。声は優しい。だけど今にも暴走して全てを壊すような不安…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(27:00~28:00)'

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com この辺まだまだ穏やかで優しい感じだけど、水中にいるようなサウンドが現れて、また少し違う展開を見せている。微細な変化がとても楽しい。しかし、じっくり分解して聴くのだけでも相当に体力がいるから、聴きな…

雑感190526

休日の朝に無駄なことをしてしまうと、不快さを忘れるのに時間がかかる。人に会うと救われる。 新宿で美味しい小籠包を食べた。皮と肉と汁が一個の物体として収まっている。「確かに食べ物を食べた」という実感が湧く。自分が頑張って作ったものが世界に存在…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(26:00~27:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 穏やかかつ快楽的な音が流れていくわけだけど、この辺り少しボーズオブカナダを思いだしますね。ミクソリディアンスケールをベースにした和音感覚と、ファットなシンセのサウンドが。ビートと声のサンプリングを…

Jim O'Rouke/Sleep Like It's Winterを一分ずつ聴く(25:00~26:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 中音域のシンセの持続音が重なっては消え、豊かな流れを作り出す。おそらくギターのフィードバックでかたちづくられていた甲高い音が薄れていることが、このあたりの時間帯の暖かさ、季節でいえば春を連想する理…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(24:00~25:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 暖かい時間が続く。直近の1分間がロングショットで大地を広く映すような映像だったとしたら、この1分間はカメラがクローズアップになり、陽射しを受けた土や水の反射を接近して撮っている。映像とのパラフレーズ…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(23:00~24:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 曲が中盤を過ぎ、おおらかな音の膨らみが訪れる。果てが見えないほど開けた大地のような、途方もなく大きな空間に身を置いたような感覚。持続していく音には豊かな厚みがあって、途中には地響きのような低音の唸…