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次の1分間は今までよりも穏やかな印象を与える。高いキーンと響く音が減り、虫の鳴き声のような音が控えめの音量でわさわさと聞こえてくる。
このわさわさいう音をどう鳴らしているのか気になるのだけれど、インタビューで短波ラジオを使用していると言っているので、おそらくラジオの音だろう。
使用楽器は、ピアノ、ペダルスティールギター、短波ラジオ、シンセサイザーの四種であるという。幾重にも重ねられるフィードバック音は一般的にエレクトリックギター
ではない音だと思っていたけど、ペダルスティールなら出るのかもしれない。自分の経験則だけど、エレキのフィードバックはよっぽどコントロールしない限り、倍音がもっと中域に集中するはず。
ちなみに、ペダルスティールギターはこういう楽器。
持ち運びのは大変そうだけど弾くのは楽しそうだな。
話を戻す。わさわさした虫の声ってどちらかという夏の印象を与えると思うのだけど、この曲の印象はやはり冬のままだ。ピアノとシンセの単音が冷たく、涼しく響いているからだろう。
時系列に並べてみます。
3:02 フィードバックの中、2分台から続いてるピアノの単音。(c,dときて)f。
3:05 小さい音でgの音。シンセ?少し固い響き。
3:10 短波ラジオと思わしきわさわさいう小さなノイズが目立ち出す。
3:15 ピアノでeの音
3:23 固いシンセの音だが先ほどより目立つ。音程は同じくg。
3:28~ わさわさが続く中、少し久しぶりのフィードバック。基音はa。さらにピアノでもaの音が。
3:32~41 ピアノでc,d,f,e,a。←これは2:32~44のアルペジオと同じ。
3:44 固いシンセが同じくgを鳴らす。少し先ほどより倍音強め?
3:46 a音の高音フィードバック。直後に低いシンセの持続音がfで。少し音量の小さいフィードバック音も合わせて聞こえてくる。
3:50 c,dとピアノで二音。再びf,e,aとくるかと思いきや・・・
3:58 間をおいてgのピアノ。
ピアノで同じ音列のアルペジオ(c,d,f,e,a)が確認でき、はじめて明確に反復と呼べる要素が曲に入ってきた。とはいえ、それも一音一音の弾かれるタイミングが異なっており、cから最後のaまでかかっている時間も前者は約12秒、後者は約10秒で違う。DAW上でコピーペーストしたものではなく、およそどちらも別に演奏している。ただ、この「≒反復」で、この曲の根音がaで、白鍵上を移動していることから、Aマイナーの曲だと推測することができる。コード進行が変わるというより、Aマイナーの音階の中で移りゆくモード風の曲。単調だから少し寂しくもの悲しい感じは覚えるが、強い悲壮感は出ていない。それはAマイナーの音階の二音目に当たるb音が使われていないからではないか。理論上の理由はわからないのだが、Aマイナーをb音抜きでa,c,d,e,f,gと登って弾いてみると、少し洒脱な雰囲気が漂う。その軽さゆえに、『Sleep Like It's Winter』は悲しみのような強い感情は感じさせずに、ほのかな寂しさを纏うのではないだろうか(続く)