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優しく、圧倒される。前半の(といっても全体から見ればまだ前半なんだが)頭の中を鋭くえぐられるような危険な感じがないまま、音の広がりが押し寄せてきて、聴くものを飲み込んでいく。穏やかなまま死に至らしめる。気がつかないまま死が忍び寄っていくという意味ではより危険な音楽なのかもしれないが、こういった死なら大歓迎な気もする。何より、僕は死んでいない。
7:00 フィードバックの波、cとかeとか
7:03 水の跳ねるようなg
7:04〜7:08 何度か繰り返されるc,d,f,e,aのアルペジオ。今回は弾くのが速い。10秒くらいかかっていたものが今回は約4秒。この間に虫の囁きのようなラジオ音も目立ち始める。
7:10 フィードバックでcとd、音階上で隣り合う音が同時に鳴っていて緊張度が強い。といってもちょっと小洒落ている程度のものだけど。
7:15〜7:25 少し低い音のシンセが揺れたまま持続している。蚊の鳴き声のようにも聞こえる。
7:25 やかん沸騰サウンドとラジオサウンドがほぼ同時に広がる。やかんのキーは多分e。
7:30~40 フィードバックの波なのだが、今回が高音域ではなく中域寄り。鋭い感じがしないのはそのせいか。c音とa音のフィードバックが聞き取れる。虫ラジオも相変わらず鳴っている。
7:46 e音のフィードバックが大きくなる。
7:50~ やかん沸騰が目立ち出す。
7:56~ fのフィードバック。f音は比較的少ないような。a,c,e,gあたりが使われやすいので、dやfはテンションノートの役割を担っているのではないだろうか。
ここまで聴いて思ったのは、音楽を形成する楽器要素は少ないし、おそらくもうこの時点で出揃っているだろうということ。スティールギター、シンセ、ピアノ、短波ラジオの四つの楽器の音を(エフェクターなどを駆使して)変えて、音のバリエーションを増やしているわけでもなさそうだ。それでも、やはり差異はあるわけで、同じことが起きている一分は一つもない。当然といえば当然の話だが、楽曲構造が反復で成り立っていないことはこの楽曲にとって非常に重要な要素だと思える。前も同じようなこといった気もするけど。(続く)
ジム・オルークが蔵出し音源シリーズ(?)として出している「Steamroom」シリーズもちょくちょく聴いています。今のところ「3」が素晴らしい。
Steamroomシリーズ42作を全てレビューしているHiraki Shutaさんの文章も必見。というかめっちゃありがたい。