I was only joking

音楽・文学・映画・演劇など。アボカドベイビー。

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(9:00~10:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com さて、ようやく10分に届く。長い10分間だった。ここまででもあらゆることが起きたように思うのに、あと35分もあるとは!どうなってしまうのか? 今回も1分聴いた印象を述べたいのだが、この1分間は感情…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(8:00~9:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com この一分間はなんとなくコミカルというか、ちょっと笑ってしまうフィーリングがあった。後半は少し不穏でホラーっぽい感じもあるのだけど、それも含めてどこか馬鹿らしいマヌケな感触。これは一体なんだろう。 8…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(7:00~8:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 優しく、圧倒される。前半の(といっても全体から見ればまだ前半なんだが)頭の中を鋭くえぐられるような危険な感じがないまま、音の広がりが押し寄せてきて、聴くものを飲み込んでいく。穏やかなまま死に至らし…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(6:00~7:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com どこか荘厳な雰囲気が漂う。ある種の神秘性みたいなものを常に帯びてはいたけど、今まではもっと音の波にトバされて意識が「向こう側」にいく、みたいな印象だった。ここではトバされるような音というより、静け…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(5:00~6:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 音が一音一音重なるたびに「う、美しい・・・」「き、気持ちいいい・・・」という気持ちになって、言葉に移し替えるのをやめてしまいたくなる。そんな一分間。音色として新しい音が入ってきたわけでもないのだが…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(4:00~5:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com 加えられていく音数が少ない時間。一音一音に耳をそばだてる時間が長くなり、瞑想に近い状態に体が入る。氷の洞窟の中にいる感覚。さっきまでだったらノイズに埋もれていただろう鍵盤の音が。水がはじけるように…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(3:00~4:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 次の1分間は今までよりも穏やかな印象を与える。高いキーンと響く音が減り、虫の鳴き声のような音が控えめの音量でわさわさと聞こえてくる。 このわさわさいう音をどう鳴らしているのか気になるのだけれど、イン…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(2:00~3:00)

前回はこちらiwasonlyjoking.hatenablog.com さて、2分が過ぎた。 どうやら、この曲の特徴を成している音は、音量と一緒に倍音も増加していく高音のフィードバックノイズ(ノイズというには音が整理されている、専門的な言葉を使うと日整数次倍音が少ない気…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(1:00~2:00)

前回はこちら iwasonlyjoking.hatenablog.com 前回のやつを書いてみて思ったが、逐語的に音が現れるたびに一つ一つ言葉にしてみても、聴いていない人には全く伝わらない可能性があるぞ。1分間を時系列に沿って具体的に説明しようとするより、1分間丸々の印象…

Jim O'rouke/Sleep Like It's Winterを1分ずつ聴く(0:00~1:00)

Jim O'rouke(ジム・オルーク)が2018年にCDとBandcamp上で発表した一曲44分21秒の作品『Sleep Like It's Winter』は僕にとってこの年のベスト作品でした。それどころか、今までの人生で聴いた多くの作品のなかでも屈指のものだと思われるのですが、なにがす…

LOCUSTな日記 1/27

今の気持ちは「不安でめんどくさい」です。 LOCUSTは一号が想像以上に多くのポジティブな反応をいただき、力をいただいた。二号も話し合いを進め、先週には旅行にも行った。旅行中はほんとに楽しかった。本を作る過程に「旅行」が組み込まれてるのはほんとに…

2018年ベストカルチャー20

去年書けなかったので2年ぶりにやります。今年の音楽・映画・演劇・本などからのベストカルチャー20。本、特に小説は全然読めなかったのが反省点。本(LOCUST)を作ったのが評価点。 20.Tim Hecker(10月2日 渋谷WWW) アンビエントノイズ王の雅楽奏者を…

日記 Powell Tillmansと諸々

三週間前くらいに買ったPowellとWolfgang TillmansのコラボEPが想像以上にぼく好みだった。 これは金属ビートや工事現場ノイズを使わないインダストリアルミュージックだ。インダストリアルは無頓着さによって定義される。人間の情緒に関わる一切に知らんぷ…

最近見たあれこれ

LOCUSTの準備で立て込んでいて、はじめてらしくギリギリまで色々やることがある中で、なんとか自分を保つために足は動かしている。 今日は五反田アトリエに杉本憲相・堀江たくみ・宮下サトシ三人展「わたしはお皿に落書きをしません」を観に行って、キャラク…

『LOCUST』巻頭言

『LOCUST』という本の編集長をしておりまして、創刊号が来週日曜、11月25日の文学フリマ東京で発売することになりました。 (文学フリマの情報→https://bunfree.net/event/tokyo27/) 僕が去年から今年にかけて参加したゲンロン批評再生塾の同期生を中心…

日記のようなもの 有地慈さんとのトークとROTH BART BARONの新作

日記と批評の間の子みたいなものをちょくちょく書いてみようかと。時間作るのが下手なので多分二週間に一回くらいになりそうですが。 11月3日に有地慈個展『スーパー・プライベートⅢー約束された街でー』のトークにお呼ばれして、批評再生塾同期の渋革ま…

朝子のドッペルゲンガー ーtofubeats「RIVER」のミュージック・ヴィデオについてー

Yuki Moriが監督したtofubeats「RIVER」のミュージックヴィデオは、非常にチャレンジングな作品である。本曲を主題歌となる映画『寝ても醒めても』(濱口竜介監督)が存在するからだ。「RIVER」はそもそもこの映画のために書き下ろされた曲で、しかも『寝て…

ものかたりのまえとあと Gallery SCOOL Vol.1

8月2日〜8日の期間に三鷹SCOOLで行われた展示「ものかたりのまえとあと」を観に行った。 scool.jp 美術展として企画されているが、一般的に考えられているような展示とは少し異なる。たしかに、三野新による写真や青柳菜摘による旗形の作品は展示されてい…

批評再生塾3期最終課題を全部読んで全部コメントしました

批評再生塾の最終課題の提出が終わり、投稿されたすべての批評文が読めるようになっています。僕(伏見)もなんとか書き上げました。 http://school.genron.co.jp/works/critics/2017/subjects/19/ 今回は再生塾OB三名による「下読みシステム」がないので…

新芸術校成果展「サードパーティ」レビュー 「引き裂かれ」としてのアレゴリー

※ゲンロンβ23号に載りそうだったがギリギリで載らないことになった無念のレビューを掲載します。こちらも読んで、ゲンロンも是非読んでください→https://genron.co.jp/shop/products/detail/155 明確に規定されていながらも相互に相容れないふたつの読みが…

Stars Of The Lid/The Tired Sounds Of Stars Of The Lid

批評性の全くない、ただ好きだという気持ちを伝えるためだけの文章を書いてみることにしました。多分続けてなんこか書く。最初に、この一年くらいで一番聴いたアルバムです。 もし君が死にたくなったら、これを聴けばいい。これを聴いてるあいだ、君は死んで…

新芸術校グループ展B『健康な街』に見る理想主義の先

健康な街、というステートメントからは、ある種の皮肉を連想していた。「健康」へのオブセッションを押し付ける「街」の様相をトレースしていくような。実際に作品群を前にすると、そこにあるのはよりストレートな反抗心だ。「健康」と名指された状態が実際…

東京デスロック『再生』の非-情緒性、非-ポップス性について

僕と同じく批評再生塾に参加している渋革まろん氏が、先日上演された東京デスロック『再生』について書いてるのに触発されて僕も書いてみることにしました。 marron-shibukawa.hatenablog.com とても面白く読んだのですが、なかなか首肯できない部分もあって…

新芸術校グループ展「其コは此コ」

ゲンロン新芸術校グループ展「其コは此コ」に伺いました。 shingei-group-a 新芸術校の4つのグループ展のうち、今回は最初のAチーム、四名よる展示。作家それぞれにやりたいことがはっきりしていたため、展示自体の明確な方向性は定めなかったとのことだが…

ゆうめい/弟兄

(9月9日 STスポットにて) ゆうめいは私演劇の「私」の扱いが本当に巧い。作・演出の池田亮の実体験を演劇にしている作風はハイバイの岩井秀人から受け継いでいるのだと思うが、ゆうめいの演劇はハイバイとは異なる新しい魅力を獲得をしている様に思える…

The National/Sleep Well Beastに関するメモ

9月8日(金)に発売となったThe Nationalの7枚目のアルバム『Sleep Well Beast』を家や外で4、5回リピートしたのでとりあえずの印象を。 今回は4曲リードトラックが発表されてて、どれも抜群の出来だったので期待していました。Casey Ressによるデジタ…

ナカゴー『地元のノリ』

(9月1日 アートシアターかもめ座にて観劇) 冒頭アナウンス(「携帯の電源をお切りください」のやつ)において、出てきた青年がこう告げる。「これから出てくる人たちは僕以外全員人間ではありません。僕も途中から人間ではなくなります」。直後、河童(の…

あなたは今、この音を聴いている?

ナカコーこと中村浩二氏のツイート。 アンビエントミュージックを体感するというのは、夕日が沈むのと同じだと思ってほしいんだ。私たちの演奏を主にしなくていい。目を離した瞬間、日が沈むような。ごく自然な時間の経過を感じて再発見することです — Koji …

『部屋に流れる時間の旅』について

君の幽霊になんかなりたくなかった 誰の幽霊にもなりたくなかった 僕には誰もいらない The National『Everyone's Ghost』 チェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』は能・狂言の翻訳などを通じて日本古典芸能に触れていた岡田利規の近年の活動が比較的ダイ…

小松台東『山笑う』と「外のない人々」について

小説家の保坂和志はインタビューでこのようなことを語っている。 ぼくにとってまず世界とか人生とかを外側から見る視点をいかに自分のなかから完全になくしていくかということだから。世界というのは外から見えない、自分の人生とかも外から見えないわけでね…